2017年9月3日 ブログを書こう

週に一回はブログを書こうと決めていたはずが、なかなかそうはいかない。

書くことがない。

書けるっちゃ書けるが、こんなこと書いてもなあ、みたいな気持ちになる。こんなこと書いてもなあ、みたいなことばかり結局は書いているし、書いたら書いたで、よっしゃ書いたぜ!となれるんだけど、それでもなあ、となってしまい、週に一度書くという目標すら達成できていない。

 

本当に書くことがないので最近読んで面白かった本のことを書く。

澁澤龍彦『幸福は永遠に女だけのものだ』というエッセイ集に入っている「自分の死を自分の手に」という話。「安楽死保険」を売りにこられたというエピソード。安楽死保険とはというと、毎月お金を積み立てて、自分が助かる見込みのない病気や自殺したくなったとき、できるだけ痛みの少ない手段で殺してくれるという保険だそうだ。

「それで、もしわたしが加入するとなれば、どういう利益があるのです?」とわたしはぼんやり訊いた。すると、

「まず本人の精神が、がらりと一変いたしますな」と男は胸を張って答えた。「それはもう、見違えるようになりますよ。なにしろ毎月、現金を積み立てて、自分の死を少しずつ買うのですからな。だんだん、死が目の前にはっきり見えるようになります。だんだん、自分の死の価値が高まって行くのが分ります。

 

「手前どもの安楽死保険は、かかる世の中に真の精神の価値を確立すべく、ひそかに名乗りをあげた革命的秘密結社です。それは一つの道徳運動でもありまして、"自分の死を自分の手に"というスローガンを掲げております。人間に残された最後の貴重な財産は、じつは生命ではなく死なのです。

というやり取りが行われる。星新一の「殺し屋ですのよ」みたいなオチがついているわけでもなく、ただ追い返して終わるのだが、年金よりはこっちのがいいなあなんて考えながら読んでいた。これって会社のスローガンには(おそらく)納得しつつ、癌の闘病中にも『高丘親王航海記』を書いてそのまま亡くなった澁澤龍彦のような人に入ってもらわないと儲からない保険だし、売り込む相手として澁澤龍彦というチョイスはきっと一流のセールスマンだな、という気持ちになった。

自分だったらすぐに殺してくれというか、死の価値の高まりににまにましながら生活を送るどころか月々の積み立て金の支払いにヒイヒイ言うだけになってしまう気がする。支払った分の年金を定年と同時に一括払い戻しか安楽死を買うか、そういう選択肢が、あと30年後にはできているといいなあ。